《事件》[ 534 ]2003年 6月 4日
健康器具でパチスロ大当たり 不正裏ワザ全国に被害(池袋発)
提供:朝日新聞
肩こりをほぐす低周波治療器を使い、パチスロで「777(スリーセブン)」などの大当たりの確率を高める。そんな新手の不正が全国に急速に広がりつつある。
その男(21)の指先は、ピクリピクリと不自然に震えていた。
池袋駅東口にあるパチンコ店。5月20日午後2時、店長(32)と2人の池袋署員は、防犯カメラのモニター画面を事務室で見つめていた。
パチスロ台に向かう男の指は震えるたびにスタートレバーに触れる。フロアに降りた店長が背後から声をかけた。
「低周波治療器を使っていませんか」
署員が長袖シャツをまくり上げるよう求めた。腹巻きに隠されたバッテリーや機械があらわになった。男が当てたメダルは999枚(1万9980円相当)。不正な目的で店に入ったとして、建造物侵入容疑で現行犯逮捕された。
この店では3月下旬から、低周波治療器を持った客が目立ち始めた。「持ち込み禁止」を告げる1メートル四方の看板を置いたが、多いときは1日に2、3人が見つかる。「注意しても『肩こりがひどくて』などと言って逃げようとするケースもあった」と店長は話した。
約1万6千のパチンコ店でつくる全日本遊技事業協同組合連合会(東京都新宿区)によると、被害は全国に広がる。
この1カ月ほどの間に寄せられた不正情報47件のうち、治療器を使った手口は12件。札幌、広島、山形、北九州の各市で、630枚から最高5千枚のメダルを出した客が窃盗容疑で逮捕されるなどしたという。
「学生や若い女性も使っていた。マッサージ器だから逮捕されないと思っているらしい」と大手パチンコチェーンのセキュリティー担当者(32)。それにしても、なぜ当たるのか。
_「犯罪集団の新たな資金源」
パチスロは、スタートレバーを押してドラムを回し、三つの停止ボタンを順に押してドラムを止めるゲーム機。「777」など数字や絵柄が三つそろえば大当たりだ。
業界関係者によると、「当たり判定装置」が組み込まれている。一定の秒数ごとに「当たり」「外れ」の周期があり、レバーを押した瞬間に判定する。外れなら、その後、回転するドラムの絵柄を目で追い、上手に停止ボタンを押しても大当たりは出ないという。
不正には、機種ごとの当たり周期を登録した「体感機」(電子メトロノーム)と、低周波治療器をセットで使う。
たとえば、当たりが5・25秒ごとにあらわれるとする。体感機はその間隔で低周波治療器を作動させる。治療器の電流に反応した指先は、本人の意思に関係なくレバーを押す。
いったんタイミングが合えば何度も同じパターンを狙える。当たりの確率は「数倍から十数倍に高まる」という。パチスロ内部の構造を熟知していないと、こんなからくりは思いつかない。
池袋署管内では5月下旬にも、2店で無職の男(23)ら5人が逮捕されたり書類送検されたりした。「新宿の歌舞伎町で外国人に声をかけられ、20万円で買った」「暴力団員ふうの男から14万円で買った」などと供述している。
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